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🚑救命士パパの料理哲学・第5弾 「救命と日常、どっちも命を救っている」

サイレンの音を聞くと、今でも胸が少しざわつく。
24年間、救急救命士として走り続けてきた。

真夜中だろうが、119が鳴れば現場へ向かった。
人の命と向き合うというのは、いつも“答えのない仕事”だった。

あの頃の俺は、いつも気を張っていた。
「一秒でも早く」「一人でも多く」。
ただそれだけを信じて現場に立っていた。
だけど——その緊張の裏で、
家族との時間は、どこか置き去りになっていた気がする。

今、台所で料理を作りながら思う。
“命を救う”って、現場だけの話じゃない。
家族と笑い合うこの時間だって、立派な“救命”なんだと。

疲れて帰った妻の表情を見て、
「おかえり」と言葉をかける。
それだけで、人は少し救われる。
子どもが学校の話をして、俺が「すごいな」と笑う。
それも立派な救命行為だと思う。

命って、特別なもののようでいて、
本当は“日常の中”にある。
朝ごはんを作ることも、洗濯をすることも、
誰かの「生きる力」を支える行動だ。

救命士の頃、患者の手を握りしめた瞬間があった。
「もう少し頑張ってください」
その言葉に、患者が微かに頷いた。
あの一瞬の“命の灯”が忘れられない。

そして今は、夕食の食卓で子どもが「父さん、うまい!」と笑う。
その笑顔を見ると、思う。
――あぁ、これも命を救ってるんだな。

誰かを生かすのは、医療の技術だけじゃない。
“寄り添う力”だ。
現場でも家庭でも、それは変わらない。

救命と日常。
どちらも命を救っている。
片方が派手で、もう片方が地味に見えるかもしれない。
でもどちらも尊い。
どちらも、命の物語だ。

俺は救命士をやめたけれど、
命を救うことはやめていない。
今は、家庭という現場で、心の救命を続けている。

そして思う。
「人を救うこと」と「人を想うこと」は、
結局、同じことなんだと。

今日も台所で料理の湯気を見つめながら、
静かに思う。

――俺はまだ、“命を救っている”。

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