先日、4男の中学2年の息子が、少しだけ真剣な顔で聞いてきた。
「パパ、サンタクロースって…いるよね?」
夕飯後のリビング。
外は冷たい空気で、窓ガラスがうっすら白く曇っていた。
部屋の中ではストーブの音が“コトコト”と響き、ほんのり灯油の匂いが漂っている。
その静けさの中で、息子の声だけがやけに澄んで聞こえた。
「今日学校でさ、“サンタはいない”って友達が言ってて…本当なの?」
胸の奥がじん、と温かくなった。
——中学2年にもなって、まだ信じてくれているんだ。
嬉しくて、愛おしくて、なんとも言えない気持ちになった。
私は反射的に答えていた。
「サンタさんはいるよ。だってクリスマスの近くになると、
サンタがプレゼント配ってる映像、YouTubeで流れるだろ?」
息子は一瞬だけ疑いの眼差しを向けてきた。
「ほんと?」とでも言いたげに、じっとこちらを見る。
けれど、すぐに表情がふっと緩んで、「そっか」と笑った。

うちには子どもが5人いる。
なぜだろう、例外なく全員、中2か中3までサンタを信じていた。
普通なら兄弟の誰かが真っ先に暴露して、夢は崩れるはずだ。
でも、うちの子どもたちは——
“兄弟で夢を守る”んだ。
その姿が、なんだか胸をぎゅっと掴んで離さなかった。
友達に否定されても、すぐに信念を曲げない。
兄弟同士で夢を壊し合わない。
そんな小さな優しさが、この家の空気を作っている。
そして思った。
——情報が溢れる今だからこそ、“温かい嘘”が必要な瞬間もある。
救急現場で24年間、出動し続け、「事実」を伝えなければならない場面を山ほど経験した。
だからこそ知っている。
人を動かすのは、事実よりも“心の安全”だ。
子どもにとってのサンタは、
プレゼントじゃなくて“信じられる世界”の象徴なのだろう。
そして、それは大人も同じだ。
スタッフにとっての安心。
利用者さんにとっての安全。
顧客にとっての信頼。
——すべて、“温かい物語”の上に成り立っている。
情報が多い時代だからこそ、
誰かの夢を壊すことは簡単だ。
でも、誰かの心を守るための“優しい嘘”をつける大人でありたいと思った。
息子が部屋に戻るとき、
廊下に響いた足音がやけに軽く感じた。
あの背中を見送りながら、
私はそっと思った。
「信じる力を育てるのは、大人の温かさだ。」
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