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救命士パパの料理哲学・第5弾 「焦げてもいい。それも味になる。」

フライパンから、ちょっと煙が上がった。
「やっちまった……」と思った瞬間、
焦げた匂いが台所に広がる。


家族の誰かが、「あ、父さんまた焦がしてる!」と笑う。
でも最近は、その言葉にも笑って返せるようになった。

昔の俺なら、イライラしてただろう。
“失敗=悪”だと思ってたから。
現場でも、間違いが命に関わる世界で生きてきた。
だからこそ、焦げることにも妙に神経質だった。

でも今は思う。
焦げたっていいじゃないか、と。

焦げには、焦げの良さがある。
香ばしさも出るし、少し苦いけど、それが味に深みを加える。
人生も同じ。
完璧を求めすぎると、疲れてしまう。
むしろ、少し焦げたくらいがちょうどいい。

若い頃は、なんでも上手くやりたかった。
人間関係も、仕事も、家庭も。
「失敗したくない」と思う気持ちが強すぎて、
気づけば息苦しくなっていた。

けれど、50を過ぎた今ようやくわかる。
焦げる経験を重ねた人ほど、味がある。
人の痛みもわかるし、他人の焦げた部分を責めなくなる。
そんな人こそ、優しくて強い。

この前、焦がしたハンバーグを食卓に出した。
「ちょっと焦げてるけど、味は悪くないぞ」と言うと、
子どもが笑いながら「うん、香ばしいね」って答えた。
それを聞いた瞬間、胸の奥が温かくなった。

焦げてもいい。
焦がした自分を責めるより、
「次はもう少し火を弱めよう」と考えればいい。
それでいい。

仕事も家庭も、同じだ。
怒られたり、落ち込んだり、失敗したり。
そんな“焦げ跡”が、自分らしさを作っていく。
焦げのない人生なんて、味気ない。

焦げたフライパンを洗いながら、ふと思った。
「俺の人生も、焦げ目だらけだな」
でも、そこには努力の跡がある。
汗をかき、涙を流し、必死に生きてきた証だ。

焦げてもいい。
それも味になる。
そう思えるようになったとき、
ようやく人生の本当の“うまみ”が見えてくる気がする。

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