夕方6時。
一日の仕事を終え、エプロンをつける瞬間にふと思う。
「なんで俺、また包丁握ってるんだ?」
24年間、救急救命士として現場に出てきた俺にとって、台所もある意味“戦場”だ。
相手は命じゃなくて食材。でも、焦げる・生焼け・味付け失敗——どれも一歩間違えば家族のブーイングが飛んでくる。笑
正直に言う。
自分のための料理なんて、どうでもいい。
冷蔵庫の残り物を炒めて、醤油をちょっと垂らして終わり。
でも不思議なもんで、家族のためとなると急にスイッチが入る。
「今日はあいつの好きな唐揚げにしようか」
「味噌汁はちょっと濃いめにしてやろう」
そんな小さな工夫が、なぜか嬉しい。

料理って、結局“要領”だと思う。
包丁の持ち方も、段取りも、慣れてくると無駄が減る。
最初は失敗して当たり前。でも続けてるうちに、「ここで火を止める」「この順で切る」って勘が身につく。
まるで現場の判断と同じだ。
冷静に、手際よく、そして愛情を忘れずに。
要領が悪いと、焦って焦がす。
でも、焦げたっていい。
「またやっちまった」と笑って次に生かせば、それも経験だ。
仕事も人生も、結局はこの繰り返しなんだよな。
食卓に並んだ夕食を前に、子どもが「うまっ!」って言う瞬間。
その一言で、すべてが報われる。

救急車のサイレンよりも、心に響く。
料理って、人を生かす仕事だ。
誰かの笑顔をつくるって意味では、救命と変わらない。
だから今日も、俺は台所に立つ。
家族の笑顔を守る“家庭の救命士”として。
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