
夜の静けさを破るように、
リビングで流れていたテレビの効果音が「ピッ」と鳴った。
その瞬間、身体がビクッと反応した。
——あ、これ。
指令音に似ている。
消防署や救急車の車内で何万回と聞いた、あの独特の音域。
あの音が鳴った瞬間に身体が動き出した。
あれは“考えて”動いたわけじゃない。
“身体が勝手に”動く。
もう辞めて半年以上も経つのに、
今でもその音域に触れると、
背中の筋肉がキュッと締まり、
呼吸がすこし浅くなる。
条件反射——と言えば簡単だ。
でも、あれはもっと深い。
「生きるか死ぬか」の現場で積み重ねてきた経験が、
身体の奥に刻まれている。
違和感に反応する「救命士の直感」
救急現場では、
患者さんの表情の“少しの変化”や、
呼吸音の“わずかなズレ”に気づけるかどうかで、
命が左右されることがある。
それを頭で理解していたんじゃない。
身体が覚えていた。
だから、
・胸の上下動のリズム
・肌の色の変化
・空気の匂い
・部屋の温度
・家族の目線の動き
こうした“微細な情報”を、
意識する前にキャッチしていた。
言葉にならないものを感じ取る——
それが救命士の直感だった。
経営者になって気づいたこと
消防を辞め、福祉施設を立ち上げ、
今は経営者としてスタッフと利用者さんに向き合う毎日。
経営の世界は救急現場とは全く違う…
そう思っていた。
でも、ある時ふと気づいた。
“あの直感”は、今も必要だ。
スタッフの小さな違和感に気づけるか
例えば、朝のミーティング。
いつも明るく挨拶するスタッフが、
少し声が小さい。
笑顔が固い。
メモを取るスピードが遅い。
言葉には出していないけれど、
心のどこかでSOSが出ている。
その瞬間、
救命士の頃と同じように、胸の奥で信号が鳴る。
——あ、これは放置しちゃいけないやつだ。
声をかけると、案の定、
「実は昨日の夜から気持ちが落ちていて…」
「仕事が溜まってしまって…」
と、心の内を話してくれる。
この違和感に気づけるかどうかで、
スタッフの働きやすさも、
利用者さんの安全も、
事業所の空気も変わっていく。
利用者さんの“少しの変化”にも直感が働く
・いつもより呼吸が浅い
・口元の動きが弱い
・視線が合わない
・顔色がわずかに白い
こうした変化も、
救命士の経験が無意識にチューニングしてくれている。
直感は、決してあいまいな感覚ではない。
経験という膨大なデータベースが生み出す“即時判断”だ。
今日の教訓
🔶直感は、積み重ねた経験が
「今すぐ動け」と身体に教えてくれるサインである。
そして、
この直感があるからこそ
私は利用者さんの安心・安全を守り、
スタッフの心の変化にも気づき、
より良い経営判断を下せている。
経験は消えない。
直感となって、これからの人生と経営を支えてくれる。
あなたにも、
あなたにしか分からない“身体で覚えた直感”があるはずだ。
その声に、どうか耳を澄ませてほしい。
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