先日、妻と何気ない会話をしていたときのことです。
職場の話になり、
「今度、管理職の話が出てるんだけどね」
と妻が言いました。
私はてっきり、前向きな話だと思って聞いていたのですが、
続いた言葉は意外なものでした。
「でも、なりたくないんだよね」
正直、少し驚きました。
能力もあるし、周りからの評価も高い。
家庭も大事にしながら、仕事でもステップアップする。
そんな姿を想像していたからです。
「どうして?」
と聞くと、妻は少し考えてから、こう言いました。
「仕事がもっと忙しくなって、
家庭がおろそかになるのが嫌なんだよね。
私は、もっと子育てがしたい」
その言葉を聞いたとき、
私はうまく返事ができませんでした。
「じゃあ、俺がもっと家事をやるよ」
反射的に、そう言いました。
洗濯も、料理も、送り迎えも、
「協力するよ」と。
でも、妻の表情は晴れませんでした。
納得していないのが、はっきり分かりました。
そのとき、私は初めて気づいたのです。
これは
「家事の分担」の問題ではなく、
「心の余裕」の問題なんだと。
仕事が忙しくなる。
責任が増える。
常に頭のどこかで仕事のことを考える。
その状態で、
子どもの何気ない一言に耳を傾けられるか。
表情の変化に気づけるか。
「今日、何があったの?」と
心から聞けるか。
妻が不安に感じていたのは、
家事が回るかどうかではなく、
「母親としての自分を大切にできなくなること」
だったのだと思います。
40代という年代は、
仕事でも家庭でも、
「責任」が一気に増える時期です。
子どもは思春期に入り始め、
親の関わり方がますます重要になる。
一方で、仕事では
「次の役割」を期待される。
どちらも大事。
でも、どちらかを選ばなければいけないような
空気を感じてしまう。
だから多くの人が、
「自分の本音」を飲み込んでしまいます。
本当は、
仕事を投げ出したいわけじゃない。
家庭だけに閉じこもりたいわけでもない。
ただ、
どちらも大切にしたい
それだけなのに。
妻の「管理職になりたくない」という言葉は、
逃げでも、諦めでもありませんでした。
「今の自分にとって、何が一番大切か」
それを、ちゃんと考えた結果だったのだと思います。
この話をしてから、
私は妻を見る目が少し変わりました。
「もっと頑張れるのに」ではなく、
「もう十分、頑張っているんだ」と。
家庭と仕事の両立に、
完璧な正解はありません。
でも、
自分の気持ちを後回しにし続けることだけは、
どこかで無理が出てしまいます。
もし今、
「このままでいいのかな?」
と少しでも感じているなら、
それは、
あなたがサボっているからでも、
甘えているからでもありません。
ちゃんと向き合っている証拠です。
今日だけは、
「私はどうしたいんだろう?」
そう、自分に問いかけてみてください。
答えはすぐに出なくても大丈夫です。
考え続けること自体が、
もう十分、前に進んでいる証拠ですから。

コメント