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🔪救命士パパの料理哲学・第2弾

「包丁は研がないと、心も鈍る」

私は、包丁を研ぐ音が好きだ。
シャッ、シャッ、と静かな夜の台所に響く。
何も考えず、ただ刃と砥石がこすれる音を聞いていると、不思議と心が落ち着く。
――そういえば、この感覚、救命士のころと似ている。

救命士に成りたての頃、出動のない夜勤の合間に、救急バッグの中を何度も点検していた。
酸素ボンベ、心電図モニター、薬品。
「何も起こらない夜」が一番いい。
でも、だからこそ準備だけは怠れなかった。

包丁も同じだ。
切れ味が悪いと、余計な力が入って、ケガをする。
仕事も人生も、心が鈍れば判断を誤る。
だから時々、自分を“研ぐ時間”が必要なんだと思う。

俺は50を過ぎてから、中小企業診断士の勉強を始めた。
「今さら資格?」「そんなに頑張らなくても」――周りはそう言った。
でも、俺はわかっていた。
心を研がないと、鈍っていく。
経験に甘えて、同じところをぐるぐる回る人生になる。

研ぐって、実は地味な作業だ。
努力しても、すぐに結果なんて出ない。
でも、続けているうちに“スッ”と手応えを感じる瞬間がある。
その感覚が、たまらなく嬉しい。

料理の包丁も、人生の心も、使い続けるほど摩耗する。
放っておけば、切れ味は落ちていく。
だからこそ、手を止めて研ぐ時間を持たなきゃいけない。
それは休むことでもあり、整えることでもある。

子どもたちには、こう伝えたい。
「焦らなくていい。時間をかけて、自分を磨け。」
効率よりも、丁寧さのほうが人生を豊かにする。
包丁も、人間も、急にピカピカにはならない。

今日も、研ぎ終わった包丁で野菜を切る。
“スッ”と切れるその感覚に、自分の心も研がれた気がする。

――包丁は研がないと、心も鈍る。
そう思いながら、俺は明日も砥石を手に取る。
磨くのは、刃じゃない。
生き方そのものなんだ。

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